プーチンによる虐殺の歴史シリーズ第二弾。「プーチンの正体」黒井文太郎著、「ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟」グレンコ・アンドリー著、ドキュメンタリー映画「アメリカが最も恐れた男”プーチン”」などを参考にしてみていきたい。
シリア反政府勢力を実質的に虐殺している
2013年8月にシリアで化学兵器が使用されたことが確認された。アサド政権軍でサリンが使用されて住民1000人以上が殺害されたのだ。
その後、化学兵器は複数回使用されている。2014年と2015年に確認されているのと2017年にも空爆の際に化学兵器が使用され死者少なくとも100人負傷者400人という事態になっている。
化学兵器については直接的にロシアが手を下したわけではないがプーチンは2011年3月から始まったシリアの民主化運動で国民を弾圧するアサド政権を軍事援助するなど強力に支援している。またアサド政権を支えるために国連安保理決議で拒否権を濫発している。
さらに、ロシアのメディアはシリアで化学兵器の使用がされたことについて、でっちあげだと報道した。プーチンは化学兵器による攻撃は”やらせ”だと断言している。
それは真実でもなんでもなく戦争犯罪を隠すためのものでしかなかった。実際、ドキュメンタリー映画「アメリカが最も恐れた男”プーチン”」には化学兵器にやられて痙攣する人や横たわって動かない人が撮影された様子が流されている。その他の報道でも化学兵器の影響で犠牲になってしまった子供の写真なども掲載されている。

明らかに起きた化学兵器の使用を、堂々と”やらせ”だと言えるその神経は狂っているといか言いようがない。
ロシアのメディアはプーチンにコントロールされてしまっていて全く真実を伝える役目を果たしていないようだ。「スプートニク」や「RT」においては事実にもとづかないいわゆるフェイクニュースが横行している。化学兵器がやらせだというでっちあげ報道もプーチンが作ったフェイクと言わざるを得ない。
さらに笑えないのが2019年3月に「フェイクニュース禁止法」という名のロシア政府批判などを違法とする法律ができてしまったことだ。つまりロシアではプーチンに対する批判もできないということになってしまっているのだ。もうやりたい放題の状態だ。
「プーチンの正体」の著者である黒井文太郎はその著書でプーチンの責任による殺戮のうち最も犠牲者が多いのは圧倒的にシリア紛争だと指摘している。
プーチンが独裁政権を支援、今日まで殺戮し続ける道を開かなければ死ななくて済んだ命は多い。アサド軍兵士も含めたシリア紛争による死者数は60万人以上に上ると言われている。
2014年から続くウクライナへの不法侵略行為
ロシアによるウクライナへの不法な侵略行為は2014年から続いているものだ。
2013年11月にEUとの協力協定交渉がロシアの圧力で見送りになったことに対してキーウで協力締結要求のデモが起こった。このデモが大きくなっていきデモ隊と治安部隊が衝突するようになる。2014年2月18日から20日にかけて100人以上のデモ参加者が治安部隊に殺されるという事態となる。
国民に銃を向けて殺したことに対して当然、ウクライナ国民は怒った。その時の大統領であったヤヌコビッチは退任を要求される。責任を追及されれば命すら危うい状態となったヤヌコビッチは国外逃亡してしまう。
2月22日にドゥルチノフ大統領が代行就任して2月26日には新内閣が発足した。さあ、これから新しいウクライナとしてやっていこうとしたのも束の間、2月27日にクリミア半島のセヴァストポリ市に駐屯していたロシア軍が基地から出て半島全体に広がり、占拠してしまった。
ロシアはウクライナの混乱に乗じて侵略行為を開始したのだ。プーチンはこのようなタイミングを待っていたのだのだろう。
3月18日にはロシアはクリミアの領有宣言をして3月末までにクリミアの各地の制圧を完了した。
しかしこれでロシアの侵略行為が終わったわけではなかった。さらにドネツク州、ルハンスク州に武装集団が入り込み暴動が広がり5月半ばには両州の半分が武装集団に占拠されてしまう。
その後8月にロシアの正規軍が投入されウクライナ軍は敗れてしまう。ミンスク合意で武装集団は武装解除してウクライナ領内から撤退するという話になったがそれもすぐにロシアは破ってしまう。
さらに第二ミンスク合意で和平合意が結ばれるがそれすらも破られロシアからの小規模な攻撃やミサイル発射、砲撃や銃撃は繰り返されてきた。
この戦いの過程で2022年1月までに約1万4000人が死亡している。これらの犠牲もプーチンに責任があると言える。
ナワリヌイ氏の暗殺未遂はFSBの関与が判明している
いったい何人殺せば気がすむのかと言いたくなる。しかしボロを出していることもあり、ごまかしなどきかない状況にあるとも思う。
ロシアの反体制活動家のアレクセイ・ナワリヌイ氏は2020年8月20日シベリアのトムスクで搭乗したモスクワ行きの飛行機内で倒れて重体に陥った。

ロシアの病院では毒物の痕跡なしとされたが仲間達の尽力でドイツへ移送されドイツの軍研究所で血液サンプルが分析された結果、旧ソ連が製造した「神経剤ノビチョク系が使われた証拠がある」と発表された。
犯人はFSBであることがイギリス「ベリングキャット」、アメリカ「CNN」、ロシア「インサイダー」、ドイツ「シュピーゲル」の共同調査で判明している。そう、判明しているのだ。
ナワリヌイ氏は一命をとりとめて現在も生きているがロシア当局により逮捕されてしまい現在も収監中だ。
ナワリヌイ氏はCNNのインタビューにこう答えている「私はプーチンが認識していたと確信している。あれほどのスキル、あれほどの期間をかけた作戦が、FSBのボルトニコフ長官の指示なしに存在するはずがない。そして同氏はプーチン大統領の直接的な命令がなければ決して敢行しない」。
プーチンは嘘に嘘を重ねているようだが、このごまかしがいつまでも通用すると思っているのだろうか。ただ、ひとつ言えることはプーチンはイカれているが強大な権力を握っている、ロシアは核兵器を持つ強国なのだ。そして彼は自分から折れることがない。
かなりタチが悪いのだ。
しかし、正義は彼のは側にはない、全くないのだ。だからこそウクライナは負けてはならない、負けてしまったら彼の侵略行為や民主主義に反する犯罪的行為が正当化されてしまう可能性があるからだ。そして民主主義国家の日本はウクライナが勝つまで支援し続けなければならない。