俺が高校生の頃、まだバブルの残り香が漂う雰囲気があったのだが「ホットドッグプレス」という若者向けの情報誌があった。
書いてある内容は今思い出すとしょうもない愚にもつかない情報だらけだった気がする。女を落とすにはこうしたらいい、とかこういう服装をすれば女の子にモテる、とかそんなことが書いてあって、今思えばそれを半分くらい真に受けていた若い頃の自分を思い出すと恥ずかしくなる。
女の子を落とすのにマニュアル的なものに従っていてうまくいくわけがない。人それぞれ個性があるのに、こうすれば女は落ちる!とか、こんな服装の男に女は惚れる!とかバカバカし過ぎる。
平成の初期の頃はまだそんなステレオタイプなバカ男を量産する雑誌が売れていたのだ。そして、俺も「ホットドッグプレス」を真剣に読んでいたバカな男子高校生の1人だった。
まあ、でも「ホットドッグプレス」をみんなで回し読みして一番盛り上がるのはハードボイルド小説家の北方謙三が連載していた「試みの地平線」という人生相談コーナーの話題だった。
クソみたいな女の子攻略マニュアル的な記事を一通り読むとその人生相談コーナーのページに辿り着く。
散々書いてあるマニュアル通りには人生はいかない。そこには壁にぶち当たった若者の叫びみたいなものが書かれていた。まあ、その質問も本当に読者から送られてきたものかどうか定かではないが、とにかく若い頃の俺たちにとってはインパクトがある内容だった。
細かいことは覚えていないのだが、だいたい恋愛の悩みや早く童貞を捨てたい、みたいな性に絡む悩み相談が多かった気がする。
すると北方謙三は「女にモテないとかうだうだ言ってないでバイトで稼いだ金でソープに行って一発やってこい」とか「おまえをふった女がどれだけいい女かわからんがそんなものは幻想だ、ソープに行って一発やってくればわかる」みたいな回答をするのだ。
俺はそれを読んで、ん〜それって解決になってるのかな?と思いつつも妙な説得力のある感じに寄り切られ、そしてまた次号でもこの相談コーナーを真剣に読んでしまうというループを繰り返した。
いつしか、「ホットドッグプレス」は買わなくなったが試みの地平線だけはたまにコンビニで立ち読みしていた。
そして試みの地平線の最終回を立ち読みしたのは2002年だった。20年前のことなのに鮮明に覚えている。立ち読みにも関わらず、もうこの相談コーナー読めないのか…とかなり寂しさを感じた自分がいた。そしてそのホットドッグプレスを購入して家でじっくり読み返した記憶がある。
あれから20年、俺はもう若者ではなくなってしまった。娘2人のお父さんとなり、心の中に渦巻くドス黒いものをうまいこと飼い慣らして良識のある大人のように振る舞っている。
俺の耳に、さまざまなニュースが飛び込んでくる。くだらない下世話なニュースも飛び込んでくることもある。
「お酒を飲んで気分が悪いので水を…みずほ銀行員女性の両胸2度触ったか」というニュース、どうでもよすぎるニュースだが見ず知らずの20代女性に男が酔ったフリをして近付き、付きまとうというしょうもない愚行をやらかす事件。
香川照之さんの事件もしょうもないと言えばしょうもない。あれだけの人気と実力がありながら遊び方に品が無さすぎると言うか、時と場所さえわきまえればこんな状況にはならなかったはずなのに。
北方謙三風に言えば「ソープに行け」としか言えない。
そんなに、悶々としているならソープにでも行って合法的にスッキリさせてもらった方がよほどよいではないか。
40代になった俺は、歪んだ形で性欲を発露する輩たちに「ソープに行け!」というアドバイスをすることができるかもしれない。